パワートランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)には、その負荷が短絡したり誤動作で電源短絡などが生じた場合でも、IGBTを保護するために短絡時の耐量が定められています。デバイスシミュレータのMixed-Mode解析機能を使えば、短絡時にIGBTに流れる電流を著しく制限する事で耐量を向上させる新しい回路の設計が可能です。
図1は新しい保護回路を持ったIGBTの回路図と、その回路をMixed-Modeで解析して最適化するためのIGBTおよび付随するトランジスタの断面構造を示します。この保護回路はIGBTの負荷短絡時に、コレクタCとエミッタEの間を流れる電流の増加を検知して、IGBTを直ちにスイッチオフさせる事が出来ます。
図1 解析したIGBTを含む等価回路(左上)とその各部分を構成するトランジスタの断面図
以下に図1の保護回路とIGBTからなる系をデバイスシミュレータで解析した例を示します。図2に保護回路の有無によるIGBTのコレクタ-エミッタ電圧とコレクタ電流の関係を示します。図から判るように、保護回路がある場合には,負荷短絡によってIGBTのコレクタ-エミッタ間に約4000A以上流れようとすると、保護回路が働いてIGBTをスイッチオフする事がわかります。
図2 IGBTのコレクタ電流のVCE依存性

シミュレーションの結果を表1に示します、このRTC回路があるIGBTはRTC回路無しの耐量が6μsであるのに対し、今回のシミュレーションの負荷短絡試験条件である100μsの間には破壊せず、大幅な短絡耐量の向上がわかります。
表1 新方式のRCT保護回路の有無によるIGBTの破壊の有無| RTC回路 | VCE[V] | 短絡耐量 [μs] | 破壊 |
|---|---|---|---|
| 無し | 100 | 6 | する |
| 有り | 100 | 100以上 | しない |
| 400 | 100以上 | しない | |
| 600 | 100以上 | しない |

左図はこの保護回路がない場合に、最終的にIGBTが熱破壊に至る途中でラッチアップする前(図左)と後(図右)での内部での電子濃度分布が増加する様子を示します。IGBTのゲート部近傍で電子濃度が増大している様子が分かります。
当社はシミュレータを提供するだけでなく、シミュレータを応用したこの様な解析についても、経験ある技術者がコンサルテーション致します。